第128回
2019.02.23
13:30~16:50
第一部 発 表
橋爪 大輝
アーレントの行為(活動)概念をどう解釈すべきか
ハンナ・アーレントの主著『人間の条件/活動的生』(英語版1958年/ドイツ語1960年)の中核をなすのは、労働・仕事・行為という三つの活動性についての分析である。このうち、労働と仕事(ドイツ語版では制作)については、アーレント自身が具体例を挙げつつ、なにかを生産する活動性であると規定しており、直観的にも比較的理解しやすい。これにたいし、行為(action, Handeln:活動と訳される場合も)の活動性は、同書のなかでいちばん紙幅を割かれており、もっとも重要な位置づけが与えられているのは明らかなのだが、にもかかわらずその内実がはっきりとしない。多くの規定が与えられているが、それらは一見すると論理的に相互に独立であり、またその活動性が通用する射程もときにきわめて広く、ときにきわめて狭い。(たとえば、行為は関係を設立するという性格づけは、日常的な行為も含めてきわめて広く妥当するのにたいし、行為は人格の唯一性を開示するといわれる場合、そうした行為は経験上きわめてまれなものに思われる。)
こうした状況に呼応するかたちで、行為概念の解釈者たちもまた、それぞれに固有の解釈を展開することになる。いわば様ざまな意味のクラスタの集合としての行為概念は、どこを強調するか、どの側面に光を当てるかによって、様ざまに相貌を変えるからである。本報告では、アーレントの行為概念の解釈者たちが、この概念をどのように理解してきたのかという解釈史を見ることによって、解釈の傾向を分類し、行為概念の多面性を洗い出したい。そして、可能であれば、分裂する行為解釈に統合をもたらすファクターを探り出したいと思う。
【参考文献】
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アーレント、志水速雄訳『人間の条件』ちくま学芸文庫、1995年。
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アーレント、森一郎訳『活動的生』みすず書房、2015年。
第二部 発 表
栁田 詩織
カントにおける心術の問題(仮)
道徳とはなにかという問いへの答えを、カントは義務としての定言命法・道徳法則のうちにもとめたといえる。ではわれわれ人間はどのようにして道徳的になりうるのか。この問いに対してカントがどのような思考を展開したかを考察することが本発表の目的である。
カントによればわれわれが道徳的であるか否かは、道徳法則に従っているか否かによってはかられる。ではどのようにして道徳法則に従うことで道徳的になれるのか。この問いに答えるためには「心術Gesinnung」概念を検討しなければならない。われわれが道徳法則に従うということは、傾向性ではなく道徳法則を選択するという心構え=「心術」を有しているということだからである。
カント倫理学の特徴として「心情倫理学」と呼ばれることも多いいっぽうで、心術の意味や立ち位置は明確ではない。本発表では心術について確認したうえで、われわれがどのようにして善い心術を獲得しうるかを「心術の革命」の議論から検討する。またそこでは叡智的でも感性的存在者でもあるわれわれの存在のあり方が、時間という観点から見直される予定である。
【参考文献】
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カント『実践理性批判』『たんなる理性の限界内の宗教』『人倫の形而上学』
【日時】
2019.02.23(土)
13:30~16:50
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【場所】
《会場のご案内》
・湯島地域活動センターは、東京大学本郷キャンパスの隣にある文京区の施設です。
・入り口には「文京総合体育館」と書いてありますが、その建物のなかに地域活動センターがあります。
・「文京総合体育館」の1階正面玄関から入って、そのまま真っすぐ進みます。つきあたりが、多目的室です。
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【来場の手引き】
・都営地下鉄大江戸線・東京メトロ丸の内線
「本郷三丁目」駅より徒歩7分程度。
・東京メトロ千代田線「湯島」駅より徒歩12分程度。
(駅からのルートにつきましては、
お手数ですが地図をご確認ください。)
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※参加無料
※皆様ご自由にご参加ください。
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【関連リンク】
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