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第21回

2005.02.18

 森田 團
「歴史の神話化──アルフレート・ボイムラーのバッハオーフェン解釈」

 現在ではカント研究の枠内において『カントの判断力批判にいたるまでの18世紀の美学と論理学における非合理性の問題』で知られる哲学者アルフレート・ボイムラー(1887-68)は1926年に出版されたバッハオーフェン選集(『東洋と西洋の神話』マンフレート・シュレーター編)の序文を書くことで、前世紀初頭におけるバッハオーフェン・ルネサンスにおいて大きな役割を演じることになる。このハイデガー、トーマス・マン、アルフレート・ローゼンベルクなどに影響を与えたことでも著名である序文においてボイムラーは、『母権制』や『古代墳墓象徴試論』で知られる古代研究家ヨハン・ヤーコプ・バッハオーフェンの著作を、ヴィンケルマン以来のドイツ精神史に位置づけつつ、歴史哲学的に解釈することになる。その核心は「歴史の神話化」と定式化できるものである。この書物を直接的な機縁として、ボイムラーはローゼンベルクとコンタクトをとり、最終的にはナチスのイデオローグになる。言うまでもなく、ナチスにとって神話(ローゼンベルクの『二十世紀の神話』を想起するまでもなく)は、重要な概念であり続けた。発表においては

  1. バッハオーフェンの精神史のボイムラーの位置づけ(これ自体極めて興味深い解釈である)を簡単に紹介したあと、

  2. 歴史の神話化というボイムラーのバッハオーフェンの解釈を検討し、

  3. 最終的にはボイムラーのバッハオーフェン論に見出される神話概念と歴史哲学が、「ナチ神話」(ナンシーとラクー=ラバルト)といかなる関係があるのかについて見通しを与えたい。


【参考文献】

  • Alfred Baeumler: Das Mythische Weltalter, Muenchen 1965

(先述したバッハオーフェン選集の序文のみの戦後における再版)

  • J.J. バハオーフェン『母権制序説
    (吉原達也訳、ちくま学芸文庫、二〇〇二年)

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